ブタ・エッセイ2

その1・ヒヨコにふられる

初生ひな鑑別師、つまりヒヨコのオスとメスを仕分ける仕事に転職しようと、

全日本初生雛鑑別協会に電話しました。

「すいません。ヒヨコを仕分けしたいのですが」

「いやあ、まず養成所に入って資格とってもらわなきゃいけないんだけど」と、オジさん。

「じゃあ、とりあえず資料をください」

「んー、あらかじめ言っておくけど、国内では殆ど仕事ないよ」

「・・・え!そうなんですか」

「取得後、東南アジアとかに派遣するかたちになるねえ」

それでも一応、資料が届きました。資料を見ると、派遣先はドイツ、フランス、ベルギー等となって

いました。アジアなんてどこにも記載されていないじゃないか・・・。どういうことだろう。

それよりも養成所、五ヶ月の講習で1013000円!眩暈がしました。

「俺は世界中のヒナを仕分けしまくってやる・・・」と、意気込んでいたのですがこれは高い。

入所資格は二十五歳以下、視力1,0以上となっており、この時点でペケ。断念&残念。

ヒヨコの仕分け方。ヒナの肛門を指先で開くと、小さな生殖器が見え、その形状でオスかメスか

判別するそうです。そそるなあ。モテるだろうなあ。

毎年、全国の鑑別師が集まり競技会が開催されています。100羽のヒナを鑑別しまくり、

その速度と正確さを競うのです。最高記録は昭和55年の大会で3分フラット。

いまだ破られていないんだって。興味のある二十五歳以下の方は是非。収入もそうとういいようです。

その2・ストーカーとの攻防

イヤだったのは、最後まで姿をあらわさないことでした。

直接攻撃をくらった人たちには物足りないかもしれませんが、思い出すと今でも鳥肌がたちます。

「ねえ、こんな手紙がポストの中に入っていたんだけど」

母が居間でまどろんでいた私に、かわいらしい封筒を差し出しました。

それはとても汚い字でした。字を習いたての子供が、はじめて手紙をしたためたようでした。

ブタ・エッセイ1でも言いましたが、親父によって手紙が廃棄されてしまったので、

そのまま再現することは不可能です。が、うろ覚えで記します。おおまかな内容はこうです。

なお、文章は「あたしはたしは好きで、でもぜったい会いにあたしが」といった、メチャクチャな

ものだったので、読みやすいようにしました。


「近所でよくあなたの姿を見ます。好きになってしまいました。どうか会ってください。

絶対、会ってください。こないだおもてで車を洗ってましたね。今度、ぜったい会いにいきます。

あたしは今度、サーフの車を買います。ブルーの車です。とてもかっこいいです。

(注・なんだか似たような言葉を延々とくりかえしていました。話題はコロコロ変 わります)

近いうち、絶対会いに行きます。絶対にスケジュールを開けといてください。

あたしにはお姉ちゃんがいます。具合がとても悪くて、山梨の病院でずっと入院しています。

たいへん重い病気です。もう助からないとお医者さんは言います・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



最初はだいたい、こういう内容でした。両親蒼白、私は即座に竹光の日本刀を手に、だいたい夜中9時から

深夜2時くらいまで門柱の陰にかくれて我が家を警護していました。

数日が経過したころ・・・母が朝、ゴミを出しに家を出たときのことです。

そのとき、玄関ドアにはなにもありませんでした。しかし、30メートルほど離れた集積所にゴミを捨て、

家のなかに戻ろうとしたとき・・・ドアの前に、真っ赤な「バラの花束」が置かれていたのです。

本当にわずかな間だったそうです。「今週の金曜日、会いに行きます」と手紙が添えられていました。

私は眠い目をこすり、警護を続けました。いちおう、警察に通報したのですが、「何回か深夜にお宅の近くを

巡回しますわ」という頼りない対応。やはり自分の身は自分で守るしかないという現実を痛感したのです。

そして問題の金曜日。

なにも起こりませんでした。「冷やかしかよ」と思い、その夜は寝ることにしました。

安堵もつかの間、次の朝、郵便受けに新しい手紙が入っていたのです。


「このあいだは急に行けなくなってごめんなさい。本当にごめんなさい。

お姉ちゃんが死にそうです。手術代が数百万円かかります。お金がないと、

お姉ちゃんが死んでしまいます。今夜ぜったいに、郵便受けに入れておいてください

封筒に入れておいてください。ぜったいに、取りに行きます」


なんだかもう、笑ってしまいました。なんというか、ベタな感じがしたのです。

故意に恐怖心を与えているな、そう思いました。だったらけっこう頭のイイヤツだ。

しかし、警戒は緩めませんでした。何を説いても通じなさそうだ・・・北朝鮮みたいな やつです。

私は考え方を切り替えました。

「そうだ、狂気には狂気で対抗しよう」と。

「マトモじゃないヤツにはマトモじゃないやり方をする。それがマトモなやり方だ」という松田優作の

映画のセリフを思い出したのです。封筒に、現金の代わりに、あるモノを入れました。

和紙に赤いボールペンでリアルな「目」をぎっしり描き込んだのです。

あくる日、封筒を入れた便受けは、空になっていました。その後一切なにもありません。

彼女(彼?)は現金の代わりに入れられた不気味な紙を見て、なにを感じたのでしょうか。

最初、この方法を考案したときに悩みました。つまり犯人が「ヒャハア!」なんていって、

喜んでしまうんじゃないかと。しましまあ、結果オーライということで。

もし、誰かしらに狙われたら、まともな対応はしないことです。相手を調子ずかせます。

ストーカーに狙われたら、ヨダレを出しながら斧を振り回す、般若心経を唱えながら逆に追いまわす、

相手に数百通の手紙(もちろん字はびっしり)を出したりしましょう。

ようは、相手を上回る行動をすればよいのです。

で、最近この方法を、しつこい電話勧誘なんかに使っています。

「すいません、霊園のご紹介なんですが」

「アアアアア、あなたの後ろに霊がいるう」ガチャリ。

「お時間よろしいでしょうか。融資の案内なんですが」

「ぐるんばるす買いませんか。すんごい匂いのキャンペーン中です」ガチャリ。

「結婚式とかに興味ありませんかあ?」

「わたくし絶対、空気を殺したいんです。本気なんです」ガチャリ。

これでいいのです。二度とかかってきません。

しかし一回、なんかの勧誘で「いまボクんち火事なので、それどころじゃないんです」と言って、

一方的に切ったら怒りの電話がかかってきました。「さっきのやり過ぎじゃねえのか!」と

怒鳴られました。脱糞。ほどほどに。


トッ プで悶えたい



日本の地獄おまけ・トリビア

・「西遊記」は実は坊さんひとりの旅だった。

お供のブタ・・・貪欲、カッパ・・・狡猾、サル・・・凶暴。

つまりどんな気高い坊さんでも、常によこしまな心とともにある、

ということをあの作品は伝えたいわけです。

ということは、「ドラゴンボール」もブルマひとりの物語だった?





・くの一。女忍者です。これを「く」「ノ」「一」としてみましょう。

そして三つの言葉を順番に組み合わせましょう。あら不思議、

「女」となります。



・「おわだまさこ」

・「かわしまきこ」

これは超・奇怪。分かりますか。上の名前と下の名前をよく見てください。「おわだまさこ」の「お」を見たら

下、「かわしまきこ」の「わ」を見てください。で、上の「だ」を見る。そして下の「ま」上の「さ」下の「こ」

この交互に読むやり方でも「おわだまさこ」となりました。下の「かわしまきこ」もやってみてください。

「かわしまきこ」になったはずです。もちろん、ふたりとも皇室の方です。